白い香りと甘さ、そのバランスを探る
本記事は、Costa Rica Monte Copey El Alto White Honeyを題材に、素材の反応を見ながら、白い香りと甘さを両立させる焙煎について整理しています。
→ この豆の商品情報はこちら生豆情報|焙煎設計の前提
- 生産国/エリア
- Costa Rica|El Alto, Bandera, Santa María de Dota, Tarrazú
- 生産者
- Enrique Navarro Granados
- 標高
- 1920 m
- 品種
- Catuai/Caturra
- 精製
- White Honey
- 実測水分
- 10.7–10.8 %
- 実測密度
- 821–859 g/L
- スクリーン
- 7–8 mm
1. 素材特性と選定意図
今回のMonte Copey El Altoは、見た目にHoneyらしい黄色味がありました。一方、生豆の香りは比較的クリーンで、Washedに近い印象もあります。実測値は水分10.7–10.8%、密度821–859 g/Lでした。
焙煎前は、白い花やライチ、グレープフルーツを思わせる明るい香味を目指していました。設計の手がかりとして、以前扱ったEthiopia Halo Shashamane Golden Honeyの進行を参考にしています。
実際に火を入れると、参考にした豆よりも組織が硬く、温度の進みも遅く感じられました。中盤からは、その反応に合わせて操作を調整しています。
2. 焙煎設計の狙いと方針
今回は、フローラルな香りやライチを思わせる明るさ、グレープフルーツのような瑞々しい酸を、甘さで下支えするようなバランスを狙いました。
□ 狙い(焙煎結果として目指すゴール)
- フローラル、ライチを思わせる白系の明るさを残す
- グレープフルーツのような瑞々しい酸を、硬さやピール感へ寄せない
- 甘さを削らず、白系の香味を下から支える
- 香ばしさを前に出さず、長い余韻までつなげる
□ 設計コンセプト(操作レベルでの方針)
- 精製名だけで操作を決めない(精製段階での組織変化にとらわれないように)
- 中盤の進みが遅ければ、予定どおりに火力を下げず必要な熱量を維持
- FC後だけを長くするのではなく、FC前までの進行で整える
- IBTS 200℃前後を目安に、香りと甘さのバランスを考えて終点を選ぶ
3. 焙煎プロファイル
今回は500 g/予熱215℃でスタートしました。中盤からは想定より進みが遅く感じられたため、火力を下げるタイミングを遅らせました。FC後を長くして補うのではなく、その手前まで必要な熱量を維持し仕上げる方針で進めています。
※本ログは Aillio RoasTime による出力をもとに再構成しています。RoRカーブにはスムージングをかけておらず、Bullet特有のノイズを含みます。温度はAillio BulletのIBTS基準です。
□ 操作と進行のポイント
- ロースター:Aillio Bullet(IBTS基準)
- 豆量:500 g
- 予熱:215℃
- ドラム:D9
- 火力:P9 → P8 → P7 → P6 → P5 → P4
- 排気:F1 → F2
- FC:7:30.5(IBTS 196.3℃)
- ドロップ:8:09(IBTS 200.7℃)
- デベロップ:0:38.5
- デベロップ比:約7.9%
- 減少率:12.4%
□ 設計意図とRoR制御
中盤は想定より温度の進みが遅く、必要な熱量を保つためにP5、P4への移行を遅らせました。素材の進み方に合わせて火力を維持し、FCまでの流れを整えています。
終点はIBTS 200℃前後を目安に、白系の香味を支える甘さも意識して200.7℃でドロップしました。FC後は38.5秒と短めにまとめています。
カッピングでは、フローラルな香りや瑞々しい酸とともに、シロッピーな甘さが感じられました。初回として、狙っていた香味のバランスに近い仕上がりと捉えています。
4. フェーズ別ポイントと観察
| フェーズ | 設計意図 | 実施・観察 |
|---|---|---|
| ドライ | 白系の明るさを目指し、必要な進行を確保する | 500 g/215℃で開始。素材の反応を見ながら進める。 |
| 中盤 | 香りを支える甘さを作る | 想定より進みが遅く、火力を維持。P5、P4への移行を遅らせる。 |
| FC前 | 中盤からの進行を滑らかにつなぐ | 素材の進みに合わせて熱量を保ち、FCへつなぐ。 |
| デベ | 白系の香味と甘さのバランスを整える | FC後は短めにまとめ、IBTS 200.7℃でドロップ。 |
5. カッピング所感
□ 24時間前後
香りはフローラル。酸は明るく透明感があり、ライチを思わせる白系のニュアンスと、グレープフルーツのような瑞々しさがありました。すすったときに酸の輪郭がきれいに広がり、心地よく感じます。甘さと質感はシロッピーで、繊細な香味に、なめらかな厚みを添えています。余韻も長く、全体は端正な印象です。
最初は繊細さをどう捉えるか少し迷いましたが、飲み進めるほど甘さや質感、余韻とのつながりが見え、この豆のエレガントなまとまりとして感じられるようになりました。
□ 48時間前後
香り、酸、甘さのバランスは良好で、細かめの粒度でも美味しくまとまりました。24時間前後に続き、この時点でも全体のバランスの良さを感じました。
□ 総評
初回焙煎から狙っていた香味が感じられ、48時間後の抽出でもバランスは良好でした。現時点では、設計の方向性を維持してよいと考えています。このロットの魅力は、繊細で透明感のある香味にシロッピーな甘さと質感が伴うことです。白系の明るさから長い余韻まで、エレガントにまとまっています。
6. 推奨抽出
□ NEO(焙煎後約48時間)
- 豆量:13g
- 湯量:210g
- 湯温:92℃前後
- 蒸らし:40 s
- 挽き目:EK43S #14.2
- 抽出時間:2:12
- 抽出:前半で粉床をほぐし、後半は静かに注ぐ方向
NEOの抽出では、味のつながりが良く全体のバランスが良好でした、やや細かくしても美味しく成立し、香り、果汁感、甘さを一緒に感じられます。
追記:挽き目は#14.2を細かい側の目安としています。時間の経過とともに香味の輪郭がぼやけてきた場合は、+0.2ほど粗くすると、瑞々しさと果汁感のバランスが整いやすく感じました。
7. まとめ
今回は、参考にできる焙煎の型があったことで、素材の反応の違いにも気づきやすくなりました。経験を重ねるほど操作の基準は定まってきますが、その基準をどこまで使い、どこから素材に合わせて調整するかを見極めることも大切だと感じます。
今後はエイジングによる香りの開き方を見ながら、この豆の繊細さや瑞々しさを楽しめる抽出を探っていきたいと思います。
