エチオピアハニーの焙煎ログ
本記事は、エチオピア南部ゲデブ周辺、ハロ・シャシャマネのゴールデンハニーを題材に、ハニープロセスに48時間の密閉発酵を組み合わせたコーヒーを、どのように浅煎りで仕上げたかを整理しています。
→ この豆の商品情報はこちら生豆情報|焙煎設計の前提
- 生産国/エリア
- Ethiopia|Gedeb, Halo Shashamane
- 標高
- 2000-2150m
- 品種
- 74112
- 精製
- Honey (Golden Honey)
- 収穫年/入港
- 2024–2025/2025年9月
- 実測水分
- 9.5–9.6 %
- 実測密度
- 858–866 g/L
- スクリーン
- 約6–7 mm
1. 素材特性と選定意図
今回のエチオピア・ハロ・シャシャマネ ゴールデンハニーは、香りと果実感、余韻のバランスに惹かれて選んだコーヒーです。ハニープロセスに48時間の密閉発酵を組み合わせた製法も興味深いものですが、注目したいのは、そこから現れる香りや質感です。
カッピングコメントには、強いフローラル感、ブルーベリー、トロピカルフルーツ、グァバ、メロン、クリーン、長く続く余韻といった言葉が並んでいました。花のような香りと明るい果実感を、クリーンな後味と長い余韻が支えるコーヒー像が見えてきます。この組み合わせから、重たい発酵感や濃縮した果実味が主役ではないと読み取りました。ラインナップに加えるうえでは、この点が決め手です。品質の良さとユニークさに、飲みやすさも伴う豆だと判断しました。
2. 焙煎設計の狙いと方針
今回は、サンプルローストで感じたフローラルな香り、グァバを思わせる淡いトロピカルな果実味、冷めてから現れるブルーベリーのような青紫の余韻を、重く濁らせずに残すことを意識しました。
甘さを出そうと中盤を厚くしすぎると、黄色い甘さや発酵由来の丸さが前に出すぎる可能性があります。一方、香りを優先して軽くしすぎると、グァバやブルーベリーの輪郭は見えても、後半の甘さや余韻が短くなりそうです。その中間で、引き出しすぎず抑えすぎず、素材に委ねながらちょうどいいところで焼き上げることを狙いました。
□ 狙い(焙煎結果として目指すゴール)
- グァバを思わせる淡い赤のトロピカルな果実味が見えること
- 発酵感やハニーの甘さが重く残らず、透明感が保たれること
- クリーンな甘さと余韻が長く続くこと
□ 設計コンセプト(操作レベルでの方針)
- 序盤:高密度エチオピアとして必要な推進力を確保する
- 中盤:軽くしすぎず、果実味と甘さの芯を残す
- FC前:勢いを持ち込みすぎず、柔らかい入り方を意識する
- FC後:短めにまとめ、香りが開いた位置で止める
3. 焙煎プロファイル
今回は、カラモ・ウォッシュトのノルディック寄りの設計をベースに、ゴールデンハニーに合わせた補正を加えました。高めの予熱でピークを作る方針は維持しています。ハニーや多めのチャフによる重さやこもりを意識し、F2へ早めに切り替えました。
※本ログはAillio RoasTimeによる出力をもとに再構成しています。RoRカーブにはスムージングをかけておらず、Bullet特有のノイズを含みます。温度はAillio BulletのIBTS基準です。
□ 操作と進行のポイント
- ロースター:Aillio Bullet(IBTS基準)
- 豆量:500 g
- 仕上がり:443 g
- 減少率:11.4 %
- イエロー:3:59前後(IBTS 166.7℃付近)
- FC:7:15(IBTS 197.8℃)
- ドロップ:7:54(IBTS 200.4℃)
- デベロップ:0:39
- デベロップ比:8.1 %
□ 設計意図とRoR制御
当初は予熱を210℃まで下げる案も検討しました。ただ、水分9.5–9.6%、密度858–866 g/Lという数値から、低く入りすぎると香りの立ち上がりを削る可能性も考えました。まずは高めの予熱で焼き、キツさが出れば下げる、という段階的な進め方です。結果的には、そのままで狙った状態にうまく収まりました。
F1を長く使うと、チャフやハニー由来の香りを抱え込みすぎる可能性も考えていました。今回はF2を早めに入れ、季節的な要因も踏まえてこもりを避けつつ、中盤をしっかり進めています。なお、今回の500 g運用では、F2はニュートラルな位置づけです。
終盤は、香りが開くタイミングを見ました。200.1〜200.2℃で香りが一気に出たため、長く引っ張らず200.4℃でドロップしました。グァバのような淡い赤のトロピカル感と、冷めてから出る青紫の余韻が、きれいに見える焙煎になったと感じています。
4. フェーズ別ポイントと観察
各フェーズでは、香りの輪郭を保つことを優先しました。軽くしすぎると甘さや余韻が短くなり、素材の持ち味を失うと考えています。序盤から中盤は必要な熱量を確保し、FC前後で重さが出ないよう整えました。
| フェーズ | 設計意図 | 実施・観察 |
|---|---|---|
| ドライ | 高密度エチオピアとして、香りを開くための推進力を確保する | 予熱215℃で、しっかりピークを作る。 |
| 中盤 | 淡いトロピカル感と甘さの芯を作り、こもりを残さない | F2を早めに使用。チャフやハニー由来の重さを意識しながら、スムーズに進行。 |
| FC前 | 香りと透明感を残す | 勢いを持ち込みすぎず、FCへ滑らかにつなぐ。 |
| デベ | 短めにまとめ、香りの開いた位置で止める | 200.1〜200.2℃で香りが立ち上がり、200.4℃でドロップ。 |
5. カッピング所感
□ 15時間
まだ粉っぽさはありますが、香味の方向性はすでに見えていました。フローラルや長い余韻はこれからという印象です。一方、淡いトロピカル感やクリーンさは確認でき、粉っぽさが取れれば香りと余韻がさらにまとまる可能性を感じました。
□ 24時間
他の豆と並べてカッピングすると、明確に抜けて美味しく感じました。横比較で浮き上がるような強さがあり、素材と焙煎の方向性が噛み合っていると感じたタイミングです。
核果実の酸とは違う、淡い赤のトロピカルな果実味があり、グァバを思わせる印象が見えてきました。マンゴーほど濃厚ではなく、もっと明るく軽い果実感です。冷めると、ふわっとブルーベリーのような青紫の香りが抜け、丸いトーンの余韻が重なります。
後半はまだ少しばらけている印象もありました。前半の香りや果実味が先に開き、甘さや余韻はこれから整う段階だと、期待も込めて感じました。
□ 48時間(ドリップ)
HARIO V60、EK43S #14.7前後で抽出しました。時間は2:40ほどです。味わいはクリアでティー感が強く、美味しさは十分にありました。ただ、カッピングで感じた甘さや果実味の厚みを出すには、もう少し細かくしてもよさそうです。
V60は透明感やティー感を見せやすい一方、甘さの芯や後半のまとまりは控えめに出る印象でした。エイジングの進み方にもよりますが、早い段階はHARIO NEOのように少し丸く出せる器具の方が、狙った質感に合い、飲み心地もまとまりやすいかもしれません。
□ 総評(初期評価)
このゴールデンハニーは、品種と産地の持ち味に、密閉発酵由来と感じる奥行きが自然に重なるコーヒーでした。24時間時点で、他の豆と比べても明確に抜けて美味しく、個性は十分に出ていると思います。
特に印象的だったのは、グァバを思わせる淡い赤のトロピカル感と、冷めてから出る青紫の余韻です。ブルーベリーは、鼻に抜ける丸い香りとして現れました。その香りの変化を拾えたことが、大きな成功点だったと感じています。
6. 推奨抽出
このロットは、カッピングでは早くから香りや果実味を捉えやすい一方、ドリップでは抽出方法によって印象が変わる豆でした。V60は透明感とティー感が前に出やすく、NEOでは甘さやまとまりを感じやすくなる可能性があります。
□ 推奨抽出(HARIO NEO)
- 豆量:13 g
- 湯量:210 g
- 湯温:92°C前後
- 蒸らし:40 s
- 抽出時間:2:50前後
- 挽き目:中挽き(EK43S #14.6〜14.7前後)
コメント:
- #14.7はクリアで、ティー感が強く出やすい印象。
- 甘さや果実味の芯を少し足したい場合は、細かい方向へ調整。
- NEOは狙った質感に合い、甘さや後半のまとまりを出しやすい印象。
- 冷めるにつれて、淡い赤のトロピカル感から青紫の余韻へ移る変化を楽しめます。
7. まとめ
今回のエチオピア・ハロ・シャシャマネ ゴールデンハニーは、エチオピア産の単一品種と分かるものとしては3回目の焙煎でした。ハニー精製特有の要素は感じたものの、傾向はある程度掴めてきています。これまでの焙煎経験が、良い方向に活きたのではないかと思います。
最近購入するエチオピア産のコーヒーには、南国系のフルーツを感じるものが多く、今回のプロファイルにはグァバが挙げられていました。食べる機会が少ないため、これまではなんとなくイメージで捉えていた果実です。改めて香りや味わいを確認し、コーヒーの中でどう感じられるかを整理しました。それを焙煎や抽出へ落とし込む作業は、自分の引き出しを増やす良い経験になりました。
一方、焙煎の型ができて安定感が増すにつれ、新しい角度から考えることが少し薄れているようにも感じます。理屈立てて進めることは大切ですが、それだけに偏らず、違う側面からも捉えられるよう工夫していきたいと改めて感じました。
