減速を整えて、香りと甘さを残す浅煎り

減速を整えて、香りと甘さを残す浅煎り

本記事は、KARAMO COFFEE初のウォッシュドという素材を題材に、フローラルとマスカットの明るさを保ちながら、酸を立てすぎず芯のある透明感としてまとめることをテーマに整理しています。
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1. 生豆情報(焙煎設計の前提)

項目 内容
生産国/エリア Ethiopia/Sidama, Bura Karamo, Agena
生産者 Karamo Coffee
標高 2,200–2,400 m
品種 74158
精製 Washed(G1)
クロップ 2024–2025年クロップ/2025年7月入港
実測水分 9.2 %
実測密度 864–868 g/L
スクリーン 6 mm前後

□ 素材特性と選定意図

KARAMO COFFEEとしては初のウォッシュドロット。これまでのナチュラルもクリーンな印象がありましたが、このロットでは果実味の強さよりも、酸質の精度や香味の輪郭の整い方がよりはっきり感じられました。
高密度・低水分で、グリーンは淡くクリーン。香りはジャスミンのようなフローラルに、白葡萄〜マスカットの明るさ、さらに軽いトロピカルの影が重なります。ウォッシュドらしい澄んだ酸質がありながら、質感はシルキーにまとまりやすく、単に軽く焼くだけではなく、甘さの芯をどう作るかが重要だと感じました。
今回はこの素材の透明感をそのまま整えるのではなく、フローラルとマスカットを主役にしながら、紅茶のような骨格と果実の甘さをきちんと接続させる設計で組み立てました。


2. 焙煎設計の狙いと方針

今回の焙煎は、KARAMO Washed の持つフローラル、マスカット、クリーンな酸質を活かしながら、酸を前に出しすぎず甘い果実感として束ねることをテーマにしました。
ウォッシュドらしい明るさはあるものの、このロットは低水分・高密度ゆえに、FC前後で止まりやすく、操作によっては香りが紅茶寄りに散ってしまいやすい素材でもあります。そこで序盤は必要な勢いを作りつつ、中盤はなだらかに下降させ、FC前後は急に削りすぎず、FC後もゼロに落とさず歩かせることで、酸と甘さの接続を保つ方向で設計しました。
狙ったのは、ジャスミンの華やかさと甘いマスカットの果実味が並び、余韻にかけてティーライクな骨格が上品に残るバランスです。

□ 狙い(焙煎結果として目指すゴール)

・ジャスミンの華やかさが浮きすぎず、自然に立ち上がる
・白葡萄〜マスカットの酸が細く、甘さの上に乗る
・軽いトロピカル感が奥に重なり、余韻はティーライクに整う

□ 設計コンセプト(操作レベルでの方針)

・序盤:ピークは作るが、長く引っ張らず早めに整理する
・中盤:RoRをなだらかに落とし、香味の芯をつくる
・FC前:急な段差を作らず、酸の粒度を細くするように減速する
・FC後:止めずに歩かせ、短めのデベで甘さと香りを接続する


3. 焙煎プロファイル

この焙煎は、序盤で確保した熱量を中盤以降で丁寧に整え、FC前後で止まらせないことを重視した浅煎り設計です。KARAMO Washed は、FC前後で吸熱に振れやすく、ここで削りすぎるとブラックティー寄りになり散漫になりやすい。そこで、RoRの下降を滑らかに保ちながら、FC後はゼロ方向に沈ませず、歩いたまま201℃付近で焼きの方向性を整える様に着地させています。結果として、フローラルと甘いマスカットの輪郭が残り、ウォッシュドらしい精度の高い酸質を保ちながら、果実の芯を感じる仕上がりを狙いました。

※本ログは Aillio RoasTime による出力をもとに再構成しています。RoRカーブにはスムージングをかけておらず、Bullet特有のノイズを含みますが、全体の熱進行は意図通りに制御されています。

□ 操作と進行のポイント

・ロースター:Aillio Bullet(IBTS基準)
・豆量:550 g
・チャージ:IBTS 215°C
・開始設定:P9/F1/D9
・火力操作:P9 → P8 → P7 → P6 → P5 → P4(FC後も維持)
・排気操作:F1 → F2(終盤まで維持)
・FC:8:13前後(IBTS 199.2°C)
・ドロップ:9:19前後(IBTS 201.1°C)
・デベロップ比:11.8%
・減少率:11.6%

□ 設計意図とRoR制御

最初の試作では、FC前後で削りすぎたことで香りがブラックティー寄りになってしまい、甘さの芯が弱くなる傾向が見えました。そこで今回は、FC前の減速をなだらかにし、FC後もP4/F2のまま歩かせることで、反応を止めずに着地させることを優先しています。RoRの終点も1台後半を残し、ゼロ方向へ沈ませないことで、マスカットの甘さとフローラルの輪郭がつながる酸の位置を狙いました。


4. フェーズ別ポイントと観察

フェーズ 設計意図 実施・観察
ドライ 立ち上がりを確保しつつ、ピーク後は早めに整える 勢いは十分。表面先行に振れず、そのまま中盤の下降へ接続できた
中盤 RoRをなだらかに落とし、甘さの芯を作る 波打ちを抑えつつ進行。フローラルが削れず、果実の輪郭も残しやすい流れ
FC前 急減速を避け、酸の粒度を細くする 再上昇はなく、段差も小さい。刺さる酸ではなく、甘さの上に乗る明るさに近づいた
デベ 止めずに歩かせ、短めにまとめる RoRを残したまま着地。ジャスミンとマスカットがつながり、余韻にティー骨格が整った

5. カッピング所感(初期)

□ 24時間

・香りは高いが、全体の輪郭はまだ若い
・ジャスミン、白葡萄、軽いトロピカルの影
・甘さは奥にあり、まだ少し動いている印象

□ 42時間前後

・ジャスミンの風味と余韻がきれいに立ち上がる
・白葡萄の厚みと酸質が見え、トロピカルは奥に控える
・全体がまとまり始め、甘いマスカット方向の輪郭が見えてくる

□ 48–72時間(ピーク候補)

・フローラル、甘いマスカット、ティーライクな余韻のまとまりが最も明確
・トップノートと甘さの芯が両立しやすい
・このタイプはピークで一度冷凍止めする価値が高いと感じた

□ 9–12日目(常温)

・ジャスミンなどのトップはやや後退
・甘さの芯と骨格は残るが、全体は少しおとなしく見えやすい


6. 推奨抽出

このロットは粒度差に敏感で、少し細かく入るとベリー寄りに濃縮し、ざらつきや酸の太さが出やすいタイプでした。逆に少し粗く振ると、ジャスミンとマスカットの輪郭が整いやすく、ウォッシュドらしい精度が見えやすくなります。抽出では濃く出すより、太さを出さずに芯を残す方向が合うと思います。極端にシビアな豆ではないものの、メッシュのラインによって輪郭の出方が変わりやすく、調整の面白さがあるタイプです。

□ 推奨抽出(HARIO V60)

・豆量:13 g
・湯量:210 g
・湯温:91–92°C(基準)
・蒸らし:40 s
・抽出時間:2:40〜3:00前後
・挽き目:中挽き(EK43S #14.6前後)

コメント:
・ホットでは #14.6 前後が、マスカットの輪郭とシルキーさのバランスが取りやすい位置でした。
・#14.4 付近では少しベリー感が強くなり、味の密度が上がりすぎてざらつきが出やすい傾向。
・アイスでは、ホットより粗め(#14.8〜14.9前後)から入る方が、太さやティー感の増幅を避けやすい印象です。氷に直接落とすよりも、一度濃いめに抽出したものを氷で急冷する方が、このロットでは香りと輪郭が整いやすく感じました。


7. まとめ

KARAMO Washed(74158)は、ジャスミンのようなフローラル、甘いマスカット、そしてティーライクな骨格を持った、情報量の多いウォッシュドでした。今回の焙煎では、単にクリーンに整えるのではなく、酸を立てすぎず、甘さの芯とつないで束ねることを重視しています。
最初の試作では、FC前後で削りすぎることで香りがブラックティー寄りに散り、やや薄く感じる結果になりました。そこから、FC前の減速を滑らかにし、FC後を止めずに歩かせる方向へ修正したことで、フローラルとマスカットがより自然につながり、余韻に骨格が整うバランスが見えてきました。
また、このロットを通して、浅煎りフローラル系(揮発しやすい香りの多い豆)は48〜72時間付近でピークを見せ、その時点で冷凍止めする価値が高い、という保存面での示唆も得られました。時間経過によってトップノートが後退しやすいタイプだからこそ、待つより良い瞬間で止める発想が有効かもしれません。保存についてもいくつか試しましたが、このロットは豆から出るガスの影響を受けやすく、影響を抑える方向で扱う方が香りと輪郭を保ちやすいと感じました。

KARAMO Washed は、ただ軽く焼けば美しい豆ではなく、止めすぎれば散漫、押しすぎれば太る、境界の細い素材でした。そのぶん、減速のさせ方やデベのまとめ方で、味の粒度がはっきり変わる。今回の検証は、ウォッシュドの透明感をどう芯のある果実感として成立させるかを考える、かなり密度の高い経験になりました。

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焙煎設計の全体像

CYANTの焙煎は、産地やプロセスの個性を尊重し、透明感・冷めた甘さ・飲み疲れしない滑らかさを軸に、輪郭を整える設計を大切にしています。
焙煎設計全体の考え方は Roasting Philosophy にまとめています。

 

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