酸の配置を整える中浅設計

酸の配置を整える中浅設計

本記事は酸と甘さのバランスをどこに置くかをテーマにまとめています。
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1. 生豆情報(焙煎設計の前提)

項目 内容
生産国/エリア Uganda/Mount Elgon, Bulambuli
精製施設 Bulambuli Washing Station
生産者 Smallholder Farmers(Bulambuli area)
標高 1,800–2,300 m
品種 SL14 / SL28 / SL34
精製 Washed
包装/重量 GrainPro 30 kg
実測水分 9.8 %
実測密度 802–831 g/L
スクリーン 約 7 mm

□ 素材特性と選定意図

低水分寄り(約9.8%)かつ中〜高密度(802–831 g/L)のSL系ウォッシュド。
ケニア国境に近いウガンダ東部・マウントエルゴン山麓のロットらしく、レッドアップルやオレンジを思わせる穏やかな果実味と、ブラックティーのような落ち着いた質感を備えた素材です。このロットは、酸の量そのものが多いというより、情報の出方が素直で整理しやすいタイプ。一方で、火の当て方や抽出条件を詰めすぎると、酸の要素が分解して散らかりやすく、輪郭が細く見えてしまう傾向も感じられました。

今回の選定では、ケニアほどのブランド性は求めず、コストに対して品質のバランスが取れたアフリカのウォッシュドを探していました。店頭ではエチオピアのナチュラルのみを扱っていたため、アフリカ由来の果実感を、よりクリーンな形で提示できるロットを補完的に加えたいという背景もあります。情報ベースでの選定ではありましたが、実際に扱ってみると、SL系品種らしい果実の輪郭と、ティーライクな質感がきちんと感じられ、結果として当たりと判断できる内容でした。焙煎では、もともとある酸の情報量を増やす方向には振らず、明度と甘さのつながりを保ったまま整理することを重視。抽出側でも、個々の酸を強く引き出すより、粒度や撹拌を抑えて全体をまとめる扱い方を前提に設計しています。


2. 焙煎設計の狙いと方針

今回の焙煎は、SL系らしい果実味と質感を活かしながら、酸を前に押し出す方向には寄せず、整理された明度で果実味が伝わる浅煎りとしてまとめることをテーマにしました。
購入元の情報では「このウガンダは短時間で焙煎すると酸が強調され、粗さが出やすい」とされていましたが、実際に扱ってみると、問題は焙煎時間の長短そのものではなく、酸を整理する前に反応を急激に与えてしまうと、不要な酸だけでなく、本来残したい酸まで分解されやすくなる点にあると感じました。
このロットは、良い方向に振れるとレッドアップルやオレンジの明るさが素直に立ち、そこから紅茶のような落ち着いた余韻へときれいにつながります。一方で、序盤に勢いを与えすぎたり、RoRが荒れると、酸の要素が細かく分解されて情報量が増え、輪郭が散った印象になりやすい素材でもあります。
そこでIBTS温度を基準に、序盤で反応を立ち上げすぎず、中盤以降はRoRを一本線で下降させる設計を採用。FC後も過度に整理する方向には振らず、必要な仕事量を確保しながら、酸と甘さが分離しない位置で収束させることを重視しました。結果として、派手さは抑えつつも、まとまりのある酸味がかえって果実味として感じやすい仕上がりを狙っています。

□ 狙い(焙煎結果として目指すゴール)

・レッドアップル系の果実味が、整理された形で立ち上がる
・ティーライクな質感と甘さが中域で自然につながる
・SL系の骨格を残し、派手さではなく明度によって酸が際立つ

□ 設計コンセプト(操作レベルでの方針)

・序盤:ピークを作りすぎず、反応を滑らかに立ち上げる
・中盤:波打ちを作らず、下降カーブを一本線に保つ
・FC前:再上昇を作らず、酸の着地点を静かに決める
・FC後:反応を止めず、余熱主体で馴染ませる


3. 焙煎プロファイル

この焙煎は、RoRの再上昇を作らず、なめらかに下降させる設計を徹底しました。SL系ウォッシュドは、終盤の失速や戻りが味の分離につながりやすいため、過剰な操作を避け、熱の進行を一定の線で繋ぐことを優先しています。FC後は余熱主体で反応を止めず、酸と甘さが分離せずに収束する位置まで進行させるアプローチを採用しました。

※本ログは Aillio RoasTime による出力をもとに再構成しています。RoRカーブにはスムージングをかけておらず、Bullet特有のノイズを含みますが、全体の熱進行は意図通りに制御されています。

□ 操作と進行のポイント

・ロースター:Aillio Bullet(IBTS基準)
・豆量:600 g
・予熱/チャージ:IBTS 215°C
・開始設定:P9/F1/D9
・火力操作:P9 → P8 → P7 → P6 → P5 → P4 → P3 → P2
・排気操作:F1 →(中盤)F2
・FC:9:40 前後(IBTS 約199–200°C)
・ドロップ:11:10 前後(IBTS 約202°C)
・デベロップメント:約1:30(13–14%)
・減少率:約12–13%

□ 設計意図とRoR制御

序盤で勢いを作りすぎず、ピーク以降は一貫した下降を維持。
中盤で波打ちを増やさないことで、酸の情報量が増えすぎる方向に振れないよう設計しました。特に冬場は排気が効きすぎて反応が薄くなりやすいため、Fの切り替えタイミングと強さを抑え、RoRの見た目だけでなく反応の密度を保つことを重視しています。FC前は再上昇を作らず、酸を落ち着いた明度に収束。FC後は余熱主体で反応を止めず、質感と後味の伸びを確保する方針です。


4. フェーズ別ポイントと観察

フェーズ 設計意図 実施・観察
ドライ 過加熱を避けつつ、滑らかにピークへ接続 反応は素直。勢いを作らず自然に次フェーズへ接続
中盤

下降を一本線にし、酸の整理する

波打ちは出ず、酸の要素が増えすぎない方向で推移
FC前 酸の着地点を決め、再上昇を作らない 波打ちは出ず、酸の要素が増えすぎない方向で推移
デベ 反応を止めず、分解を起こさずに馴染ませる 果実・甘さ・質感が分離せず、一体感を保ったまま着地

5. カッピング所感(初期)

□ 16–24時間

・すでに飲める状態
・レッドアップルと柑橘の穏やかな果実味
・ティーライクで落ち着いた質感

□ 48時間

・全体がさらにまとまり、クリーンさが増す
・個性は控えめになるが、バランスとしての完成度は高い

□ 1週間前後

・酸と甘さが完全に一体化
・上品で安定した印象


6. 推奨抽出

このロットは、細かくすると酸の情報量が増えやすく、粗すぎると輪郭がぼやけやすい傾向があります。店の基準抽出を土台に、メッシュでまとめる方向が安定します。

□ 推奨抽出(HARIO V60)

・豆量:13 g
・湯量:210 g
・湯温:92°C
・抽出時間:2:30 前後
・挽き目:中挽き〜中細挽き(EK43S #14.5 前後)


7. まとめ

このロットは、SL系らしい果実味と酸の骨格を備えたウガンダでありながら、酸と質感の情報量を整理し、輪郭を揃えることで完成度を高めたコーヒーです。

焙煎では、RoRの波打ちを抑え、終盤まで反応を途切れさせないことを最優先に設計しました。特にハゼ前後で水分が一気に抜けやすく、温度が落ち込みやすい素材だったため、その低下を力で取り返すのではなく、デベロップメントの中で酸の置きどころを決める意識で進行させています。分解を起こさない熱の流れを維持することで、結果として、まとまりのある酸味が果実味として感じやすい構造に着地しました。

今回の焙煎では、中盤までは比較的想定どおりの流れでしたが、終盤のまとめ方、特に酸をどの位置に残すかという判断に多くの気づきがありました。酸を前に押し出すのではなく、後半で整理しながら配置することで、飲みやすさと素材感が無理なく両立する中浅設計になったと感じています。

この記録は、ウォッシュドSL系を「強調する」のではなく、酸の出方と位置を意識しながら「まとめる」ための基準点として残しておきます。今回得られた酸の置き方に関する気づきは、今後の焙煎設計にも活かしていきたいポイントです。

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焙煎設計の全体像

CYANTの焙煎は、産地やプロセスの個性を尊重し、透明感・冷めた甘さ・飲み疲れしない滑らかさを軸に、輪郭を整える設計を大切にしています。
焙煎設計全体の考え方は Roasting Philosophy にまとめています。

 

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