透明感で読むナチュラル

透明感で読むナチュラル

本記事は、エチオピア・シダマ地区 ブーラ・カラモ村 チャルチョのナチュラルG1を題材に、透明感のあるナチュラルという個性をどこまでクリーンに保ちながら、フローラルやトロピカルの明るさを整えられるかをテーマに整理しています。
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1. 生豆情報(焙煎設計の前提)

項目 内容
生産国/エリア Ethiopia/Sidama, Bura Karamo, Charcho
生産者 Karamo Coffee
標高 約2,200–2,400 m
品種 74158
精製 Natural(G1)
クロップ 2024–2025年クロップ/2025年8月入港
実測水分 9.3–9.4 %
実測密度 819–883 g/L
スクリーン 5.9–6.1 mm(小粒寄り)

□ 素材特性と選定意図

このロットは、ナチュラルらしい果実香を持ちながらも、発酵感が前に出にくく、ややウォッシュト的にも感じられる透明感を備えた素材でした。実測では低水分・高密度・小粒寄りで、熱の当て方が急になると香味の輪郭が荒れやすい一方、整えば非常にクリーンにまとまりやすい印象があります。
実際に焙煎を行うと、香りは派手に爆発するタイプではなく、フローラルの高さの中に、白ぶどう、ベルガモット、マンゴー、パッションのような明るい果実感が静かに重なってくる印象でした。そこにほのかなスパイス感もあり、ナチュラルとしては重さよりも「抜け」と「清澄さ」が目立つタイプだと感じています。
今回はこの素材を、単に華やかな浅煎りとして見せるのではなく、トロピカルやフローラルの明るさをにごらせず、冷めるほど甘さが輪郭を持って立ち上がるような設計に寄せることを主眼に置きました。


2. 焙煎設計の狙いと方針

今回の焙煎は、チャルチョの持つ透明感のあるナチュラルという個性を活かしながら、香りを過度に膨らませず、白ぶどうやベルガモット、トロピカルの明るさを自然につなぐことをテーマにしました。
最初の進行では、序盤の勢いがやや強く出ると、明るい果実感そのものは見えるものの、少しベリー感が前に寄ったり、トロピカルの抜けよりも輪郭の強さが先に立つような印象がありました。カップで見ると、きれいではあるのに、どこか少し押し出しが強く、素材の軽やかさより情報量が先に来る感じがありました。
そこで今回は、序盤のピーク後を早めに整え、中盤以降を滑走するように落としていく方向へ修正しています。狙ったのは、フローラルやトロピカルが派手に主張するのではなく、シルキーな質感と穏やかな甘さの中で自然に重なっていくバランスです。

□ 狙い(焙煎結果として目指すゴール)

・ベルガモットや白ぶどうの明るさが、刺さらずに伸びること
・マンゴーやパッションの香りが、重さを伴わず軽やかに見えること
・冷めるほどブラウンシュガーや白桃のような甘さが輪郭を持って残ること

□ 設計コンセプト(操作レベルでの方針)

・序盤:立ち上がりは作るが、ピーク後は早めに整理する
・中盤:RoRを一本線でなだらかに落とし、香味の芯と透明感をつなぐ
・FC前:再上昇を作らず、明るさを落ち着いた位置に収束させる
・FC後:長く歩かせず、余熱で馴染ませるように短めでまとめる


3. 焙煎プロファイル

この焙煎は、序盤の勢いをそのまま押し切るのではなく、ピーク後を早めに整え、中盤以降を滑らかに下降させることで、ナチュラル由来の香りをにごらせないことを重視した浅煎り設計です。
チャルチョのような小粒・高密度・低水分のナチュラルは、前半の熱量が少し強いだけで、果実味が明るく見える代わりに輪郭が荒れたり、ベリー感が前に寄ったりしやすい印象がありました。今回はその押し出しを少し緩め、FC前後の流れをなだらかに整えることで、白ぶどうやベルガモット、トロピカルの明るさをクリーンに見せる方向へ寄せています。
試作では、透明感自体は感じられたものの、少し果実味が近く見えすぎるというか、輪郭の強さが先に立つ場面もありました。今回はその詰まりを軽くほどくようなイメージで、中盤以降を一本線で落とし、FC後も短めにまとめることで、香味全体がより自然につながる位置を探っています。

※本ログは Aillio RoasTime による出力をもとに再構成しています。RoRカーブにはスムージングをかけておらず、Bullet特有のノイズを含みますが、全体の熱進行は意図通りに制御されています。

□ 操作と進行のポイント

・ロースター:Aillio Bullet(IBTS基準)
・豆量:500 g
・チャージ:IBTS 210°C
・開始設定:P9/F1/D9
・火力操作:P9 → P8 → P7 → P6 → P5 → P4 → P3(終盤)
・排気操作:F1 → F2 → F3(終盤のみ)
・FC:7:20前後(IBTS 196–197°C)
・ドロップ:8:10〜8:20前後(IBTS 199–200°C)
・デベロップ比:10〜12%
・減少率:11%前後

□ 設計意図とRoR制御

試作段階では、序盤の勢いがやや前に寄ると、果実味が明るいぶん輪郭の強さが先に立つ傾向がありました。そこで今回は、ピーク後を早めに整え、中盤以降を滑走するように接続することで、熱量の偏りをならす方向へ修正しています。
重要だったのは、中盤以降を弱めることそのものではなく、前半でついた勢いをどこで落ち着かせるかでした。前の進行では、きれいではあるものの少し情報量が近く、果実味の輪郭が前に見えやすい場面がありましたが、今回はその押し出しをやわらげることで、フローラルやトロピカルの高さを保ったまま、全体をより自然につなぐ方向へ寄せています。


4. フェーズ別ポイントと観察

フェーズ 設計意図 実施・観察
ドライ 必要な勢いは確保しつつ、ピーク後は早めに整える 立ち上がりは十分。暴れを作らず、そのまま下降へ接続できた
中盤 RoRをなだらかに落とし、香味の芯と透明感をつなぐ 波打ちは少なく、香りの高さを保ったままシルキーな質感へつながった
FC前 再上昇を作らず、明るさを刺さらない位置に収束させる 急な段差はなく、ベリー感が前に寄りすぎない着地になった
デベ 短く歩かせ、余熱で馴染ませる 長く引っ張らず早めに切り上げ。冷めるほど甘さが輪郭を持ちやすい

5. カッピング所感(初期)

□ 24時間

・香りは高いが、輪郭はまだやや硬い
・ベルガモット、白ぶどう、軽いトロピカル(パッション寄り)のニュアンス
・質感は滑らかだが、甘さはまだ奥にいる

□ 4〜6日目

・透明感が安定し、香味の線が整う
・白ぶどう、マンゴー、フローラルが自然につながる
・後味にブラウンシュガーのような穏やかな甘さ

□ 7〜10日目

・香りと甘さのレイヤーが最もはっきりするタイミング
・ベルガモット〜白桃のニュアンスが見え、質感はよりシルキー
・ナチュラル由来の重さは出ず、最後までクリーン

□ 総評(初期評価)

・このロットは若いうちは香りの高さに対して輪郭がやや硬く見えやすく、少し時間を置いた方が持ち味が見えやすい
・特に7日目前後から、フローラル、白ぶどう、トロピカル、甘さのつながりがもっとも自然に感じられた
・果実味はしっかりあるが、設計次第でベリーが前に寄るか、透明感として見えるかが変わるタイプだと感じた


6. 推奨抽出

このロットは、高密度の浅煎りナチュラルらしく、条件によってはやや詰まりやすさが出やすいタイプでした。実際に抽出してみると、攪拌を増やしすぎたり、接触時間を長く取りすぎたりすると、明るい果実感がやや近く見えたり、後半に少し重さが残ったりする場面がありました。
そのため、抽出では濃く出すよりも、粉層を安定させながら香りと透明感をきれいに出していく方が、この豆の魅力は見えやすいと思います。焙煎側でかなり整えているぶん、抽出では余計な情報を足しすぎないほうが合いました。

□ 推奨抽出(HARIO V60 / HARIO V60 NEO)

・豆量:13 g
・湯量:210 g
・湯温:91–92°C(基準)
・蒸らし:40 s
・抽出時間:2:50〜3:10前後
・挽き目:中挽き(EK43S #13.5前後)
・ステア:なし〜1回

コメント:
・単品で透明感と香りを見せたい時は V60 NEO。白ぶどうのクリアさと、マンゴー/ベルガモットの明るさが出やすい印象。
・焼き菓子と合わせて甘さや質感を少し太く見せたい時は通常のV60。輪郭がやわらかくまとまりやすい。
・詰まりが気になる日は、攪拌を強くしない/注湯回数を増やしすぎない設計が安定しやすい。比較的ざっと注いでもバランスは取りやすかったです。


7. まとめ

Charcho Natural(74158)は、ナチュラルらしい果実香を持ちながらも、発酵感が強く出すぎず、清澄な透明感が魅力のロットでした。今回の焙煎では、その透明感を軸にしながら、白ぶどうやベルガモット、トロピカルの明るさをどこまで自然につなげられるかをテーマにしています。
試作段階では、序盤の勢いが少し前に寄ることで、果実味の明るさ自体は見える一方、輪郭が強くなったり、ややベリーが前に寄って見えたりする場面がありました。そこでピーク後を早めに整え、中盤以降を滑走するようになだらかに接続することで、押し出しを少し緩め、香味全体をより自然につなぐ方向へ修正しています。結果として、若いうちはやや硬さが残ったものの、7日目前後でフローラル、白ぶどう、マンゴー、ブラウンシュガーのような甘さがきれいにつながり、冷めるほど輪郭が整う仕上がりが見えてきました。

今回の検証で大きかったのは、ナチュラルらしい果実味を強く見せる/抑えるの二択ではなく、どの位置までなら透明感の中に収められるかを判断できたことでした。少し押しすぎれば輪郭が前に出て、少し削りすぎれば散る。そのあいだを探る感覚は、やはり数字だけでなくカップで覚える部分が大きかったと思います。なお、このCharcho Natural(74158)は、焙煎コンテスト(AMBESSA JAPAN 2025)の課題豆として使用したロットでもあり、限られた評価条件の中で厚み・透明感・安定性をどう両立させるかを考える中で、この豆の崩れにくさやエイジングで整う特性がより明確になりました。店頭ではその設計思想を引き継ぎつつ、ノルディック寄りの浅煎りとして再構成しています。今回の記録は、そのポテンシャルを一杯にどう落とし込むかを考えるうえで、かなり良い基準になったと感じています。

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焙煎設計の全体像

CYANTの焙煎は、産地やプロセスの個性を尊重し、透明感・冷めた甘さ・飲み疲れしない滑らかさを軸に、輪郭を整える設計を大切にしています。
焙煎設計全体の考え方は Roasting Philosophy にまとめています。

 

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